残酷ゲームじゃなくてトライアウト観に行きますか?

実はこの時点ではまだ、観にいくことに躊躇していました。どんよりとした雰囲気の残酷な儀式を観るのは正直、つらかったです。そして、1回目のトライアウトがジャイアンツ球場で行われる11月7日の朝、大きな転換点を迎えました。

この日は青空がひろがるいい天気でした。外に出ないのはもったいないぐらいです。ある友人に

残酷ゲームじゃなくてトライアウトを観に行きますか?

とメールをしたところ、返事は「行きます」ということで決断。やはり友人がいると心強いものです。数時間後、ジャイアンツ球場へと至る山道「ジャイアンツへの道」を登っていました。

 ジャイアンツ球場は自宅付近と同じようにいい天気でした。メールの返事をくれた友人も3塁側にいました。友人の隣に座ると、静かにグランドをみつめました。

 到着してまもなく、雰囲気は独特などんよりとした雰囲気の中、投手組と野手組の対戦・シート打撃が始まりました。シート打撃はカウント1-1から始まります。このジャイアンツ球場でのトライアウトでは投手1人につき、打者4人と対戦します。

 しかし、この独特のどんよりとした雰囲気は、幸か不幸かウグイスの方のミスで一気に吹っ飛びました。

実は途中からパターンが変更になったらしく、カウント1-1からスタートは変わらなかったのですが、四球やデットボールの際はまた、打席に立てるシステムになりました。そのシステムに変わった直後、ある打者が入ろうとしたら、ジャイアンツ球場のウグイスの方、マイクが入っているにも関わらず、

「え、次、誰?」

※ちなみに入った打者はこの球場のホーム球団に在籍したジャイアンツの三浦 

こういうことが何度かありました。当事者にとってはちょっとショックだったかもしれませんが、自分にとってはどんよりとした雰囲気が吹っ飛び、心から安心して観れる雰囲気になったのです。悲壮感ただようものを観たいかといえば、答えはNOです。

何人かの投手が登板して、打者と対戦していきます。そして、小林亮寛さんの出番、彼は香川オリーブガイナーズのユニフォームで登板しました。

彼のことを記録しようと必死に携帯電話のメモ機能を活用しました。ただ、一部メモし忘れた場面もありますが、だいたいの概要はわかると思います。

亮寛 近澤(元E)ストライク ライトフライ ランナー鎌田(D) 十川(G)ファール ファール ボール センター前 斎藤秀光(SB) ストライク センター前 宮地(元SB)ボール ファール 空振り三振

結果的には安打2三振1外野フライ1でした。しかし、球速も他の選手が130km台の球速で推移する中、140kmを越えるスピード。それから、走者が盗塁しようとした際、キャッチャーから2塁への送球のよけ方も自然なよけ方。試合勘を持ち続けていないとできないわざと感じました。注目しているというのを差し引いたとしても光っていた一人でした。

 このトライアウトで何人か注目している選手がいました。その一人は栗田投手でした。彼は2年前に鎌ヶ谷で行われたトライアウトも受験した左腕投手です。スピードもコントロールも悪くありません。あのどんよりとした雰囲気の中、自分というものを持ち続け、受ける姿勢には敬意を持ちました。

栗田 近澤(元E)レフトフライ そがわ(G) 三振 斎藤秀光(SB)三振 宮地(元SB)レフトフライ

彼はその後、マリーンズの秋季キャンプに呼ばれてテストを受けたというニュースを知りました。いい結果につながることを期待してやみません。

 よく行く鎌ヶ谷スタジアム。ここでの活躍を認められ、多くの選手が札幌で活躍しています。その札幌でクライマックスシリーズが行われた時、鎌ヶ谷スタジアムではパブリックビューイングが行われていました。多くのファンが大画面を見て、ファイターズを応援していました。そんな中、一人の選手が車から練習道具をおろしていました。彼の名は中村渉。実家の職業から「畳屋」とファンからあだ名されていました。在籍2年で戦力外を告げられ、一人、練習にやってきていたのです。

中村渉 長田(Bu)センターフライ 三浦(G)ライトフライ 竹下(D)レフト前 丸山(YS)見逃し三振139km

安打1三振1外野フライ2という内容でした。同情はこういったものに禁物かもしれませんが、こういった選手にもう一度、チャンスを与えてほしいなあと感じたのは言うまでもありません。

 活躍するプロ野球選手には「華がある」と言われます。このトライアウトでその「華」をみせたのはマリーンズの藤井宏海。実はこの日、ウグイスの方より

「足をアピールしたい方はランナーに出てください。」

という放送が流れ、積極的にランナーに出た選手がいます。彼もその一人です。彼は野手として守備と打撃それに盗塁で足を魅せただけでなく、なんと、最後の最後、投手としても登板したのです。

藤井 木村(C)セカンドゴロ 竜太郎(E)セカンドゴロ 岡上(C)四死球 小関(G)レフトフライ 岡上(C)ショートゴロ

彼はその後、楽天に入団が決まった木村、横浜に入団が決まった小関をきっちりと抑えたのです。トライアウトの独特な雰囲気を吹き飛ばすような活躍!たしかにチーム事情で野手やったり投手やったりしましたが、これだけの才能の持ち主とは知りませんでした。こんな選手が戦力外とは信じられませんでした。

この藤井の大活躍を最後にジャイアンツ球場のトライアウトは終了!約50人近くが受験しましたが、このトライアウトで入団が決まったのは数人。諸行無常とはまさしくこのことかな?

ドラマは終わりませんでした。この日、小林亮寛さんに注目していた人が他にもいました。トライアウトが終わった晩のこと、この注目していた方をSNS上で知り、メッセージのやり取りをしました。小林亮寛さんのこと、藤井宏海のこと…不思議なもので職業も年齢も違うのに考え方が似ていました。意気投合し互いに今度会おうというところまでなかよくなりました。

小林亮寛さんからは後日、メッセージをもらいました。自分の熱い思いが書いてありました。このメッセージを読んでから、彼がやり続ける限り、彼のことを応援したいなあという思いがこみあげてきました。


トラックバックURL: http://www.taketake.org/trip-for-baseball/npbtryout2007/646/trackback